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2011/04/22 21:35 |
心の部屋 |
キミはいつもボクの心の部屋に来てくれる。
でも、ボクがキミの部屋に行こうとすると駄目っていうよね。
ちょっと悲しい。
心の部屋は秘密の場所だから見せたくない?
ボクはキミにならいくらでも見ていって欲しいな。
ベッドに入って眠りにつくと、そっと心の部屋に入る。
ボクの部屋に今日も、もう一人のボクが遊びに来てくれた。
「相棒の部屋は心地いいぜ」
そうかな?ボクにはよくわからないよ。
「何して遊ぶ?」
「ゲームしよう」
今日はトランプをすることにした。
カードを切っているキミ。ボクはワクワクしながら待っている。
「どうした?」
「え?あ、楽しみだなって」
「フフ、待ってろよ」
カードが並べられていく。もう一人のボクはとっても綺麗な指をしている。
いつも見ていてドキドキするんだ。
「いたっ」
「どうしたの?」
「ああ、カードで指を切ってしまって」
「見せて?」
指先を見ると右手の人差し指が少し切れて血が滲んでいた。
「大変!」
「これくらいなんともない。舐めておけば…」
「待って…」
チュ…
ボクは切れた指先を口に含んだ。
「あ、相棒…」
チュウ…チュ…
「…ふぅ、消毒だよ。もう血は出てないよ?」
「びっくりしたぜ」
「ご、ごめん。血が出てたから」
「口の中暖かいんだな」
もう一人のボクの顔が近づいてくる。
ボクはそっと目を伏せた。
チュ…
ぼくたちはキスをした。唇が触れるキス。
「もう一人のボク…」
「お返し。ありがとな、相棒」
「うん」
もっとしてくれても良かったのに…なんて考えてしまった。
いけない!トランプするんだ。
「トランプで何がしたい?」
「えっと、キミの好きなのでいい!」
「だったら…トランプは止めて相棒で遊ぶことになるぜ」
「え!そ、それは…」
頬がカーと熱くなった。
「顔が赤いぜ」
「だって…キミが変なこと言うから…」
「…しようか…変なこと」
「え…あ…」
再びキスをされる。今度は舌が入ってきた。あったかくて柔らかいキミの舌。
ボクも絡ませてもっと感じたい。
「ふ…ふあ…あ、あふ…」
「相棒…」
もう一人のボクがボクのパジャマに手を入れてくる。
「ま、待って…」
ボクはその手を押さえた。
「嫌?」
「うぅん…違うんだ。あのね…聞きたいことがあるんだ」
もしかしたらこれを聞いたらキミは嫌な顔をするかもしれない。
「いつもボクの部屋だから…キミの部屋にも行ってみたい」
もう一人のボクはその言葉を聞いて、困ったように笑った。
ああ、やっぱり聞いちゃいけなかったかな。
「俺の部屋は冷たいだけだ。何もない。相棒の部屋の方がいいぜ」
「冷たくなんてないよ。だって、キミの心の中だよ」
「俺には何もない。見たことあるだろ?俺の部屋」
そこは暗くてとても寂しそうな部屋だった。
たくさんのドアがあったのを覚えている。
きっとそのドアの中で本当のキミの部屋があって…。
「ねぇ!ドアを開けてみて!キミの本当の部屋!見てみたいな」
「相棒…」
もう一人のボクは首を横に振った。
「すまない、相棒。本当の部屋は俺にもわからない」
「そうなの?」
「おそらく、本当の部屋がわかったら…俺は相棒と一緒にいられなくなる気がする」
本当のキミが見つかってしまう。
今のキミは過去の記憶がないから、ボクと一緒にいてくれる。
でも、本当のもう一人のボクのことが分かってしまったら…一緒にいられなくなる。
離ればなれになっちゃうんだ。
「ご、ごめん…ボク勝手なことばかり…言って」
「かまわないぜ、さあ、トランプしよう」
「うん」
目の奥が熱い。ジンジンする。
駄目だ、こんなことで泣いちゃ…駄目だ…。
「相棒…」
「え?」
「すまない…」
ペロ…とボクの頬を舐めてくれた。
「泣かないでくれ」
ああ、ボクは我慢できすに泣いてしまったんだ。泣かないって決めていたのに。
「ごめんね、ボク…キミと離れたくないんだ。ずっと一緒にいたい。でもそれじゃあ駄目なんだよね。キミにはキミの大切な記憶があるはずなんだ」
止まらない。涙がポロポロ出てくる。
「俺は、記憶なんてどうでもいい。相棒と一緒にいたい。永遠に」
もう一人のボクがボクを抱きしめてくれた。頭を撫でてくれる。ボクも抱きしめる。
キミがここにいるのを確かめるように。
「どこにもいかないで!ずっと…一緒に…いて…」
「ああ、約束する」
「絶対だよ?」
「ああ、絶対だ…」
もう一度キスをした。しょっぱいのはボクの涙のせいだろう。
悲しいキスになってごめんね。
「俺の部屋のことなんて忘れてくれ」
「それはできないよ…」
「かわりに相棒の部屋に来るから」
「うん…」
ずっと一緒にいてくれる。
約束…してくれた。でも、ボクのどこかでその約束は果たせないんじゃないかなって不安になってしまう。
「もう一人のボク…キス…しよう?」
「ああ、いいぜ」
キスしていないと不安になるんだ。
キミを感じてないと悲しくなるよ。
何処にもいかないで、もう一人のボク。
ボクの記憶を全部あげるから…。
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